shota´s story
□君の音色
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ふと、どこからかピアノの音色が聞こえる。
「どこからやろ...。」
俺は、吸い寄せられるように音のする方へと向かった。
ガラッ
そこは人気のない音楽室やった。
「.........あっ。」
ヤバい。ピアノ弾いてる子と、目があった。
その子は少しうつむいて、恥ずかしそうに顔を歪めるとはにかんで
「大丈夫です。良かったら、聴いていってください。」
って優しく言った。でも俺は、
「あー...。ごめん!聴いていきたいんやけど、用事があるからさ。また、聴きに来るわ。」
ガラッ
ドアを閉めるとめっさ速く走った。
もう、自分でもわかるほどに顔が赤くなってたんや。
...こんな気持ち、初めてや。
走って走って、自分の教室に戻る。
いつものように、亮が声をかけてくる。
「おー!ヤス。どこ行ってた?」
...そうや。亮はめっちゃ女の子に詳しいから知ってるかもしれへん。
「ちょっと、用事。それよりさ、飯塚優て知ってる?亮、詳しいやん?」
「ええと...。」
鼓動が速くなる。
「知ってるよ。1年生で、俺らの1コ下やで。あんまり目立たへんけど、可愛い子やね。てか、なんでイキナリやねん。」
「別に、理由はあらへんけど。」
亮がニヤニヤしてる。
多分、理由なんかバレてる気がするねんけど。まぁ、いいわ。
優ちゃんか。
とりあえず、毎日音楽室に通ってみようか...。