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□喪失感【前】
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長い間眠っていたような気がする。そのせいか頭が痛い。
目を開けようとするが、まだ眠たくて瞼が重く感じる。薄く目を開くのが精一杯で何も見えない。
どうしようもなくただ周りに耳を澄ませているとひた、ひたと水音がする。濃厚な血の匂いがあたりに充満していることもわかってきた。

これはどうもおかしいと思い両腕を動かそうとするも何かで繋がれているようでうごかなかった。

―――ここはどこだ?僕は先ほどまで自宅で寝ていたはず・・・?

「やっと起きたな。何安眠してやがったんだ、クソヒーロー」

誰かがそう言った直後に頬に衝撃がくる。きっと殴られたのだろうが僕は丈夫だから痛くない。
むしろおかげで意識がはっきりとしてきた。今度はしっかりと目を開く。

「―――フリッピー君?」

目を開いて最初に見たもの、それはナイフを持ち、全身を真っ赤に染めたフリッピー君だった。
「何を思ってこんなことをしているのかは知らないけど、君はきっと後悔するよ。今からでも遅くは無いはずだ、だからこの拘束具を外してくれないか?」

きっと彼にこんな言葉は届かないだろう。しかしそれでも言ってみる。しかし―――

「何言ってやがんだ、俺は散々てめぇにひどい目にあわされたんだからな。すこしくらい痛めつけねぇと気がすまねぇっての」

そう言って彼はナイフで僕の腹部をえぐろうとするがなかなか刺さらない。

「もう、こんな無意味なことはやめないかい?君が後悔するだけだ・・・!?」
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