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□たとえ見えなくても
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天気がいいなぁ。
太陽はキラキラと暖かい光を地に注いでいるし、空は透き通るような水色だ。
こんな日こそ外で散歩でもしたら建築のアイディアでも浮かぶかもしれないと思って外に出てみると後ろから誰かに声をかけられた。
「そこにいるのはハンディ君ですか?」
その声はモールさんか。
「そうだよ。おはよう、モールさん。こんなところで一体どうしたんだ?」
「天気もいい事ですし、家にこもっているのも体に悪いので散歩をしようかと思ったのですよ」
そうなのか・・・。この人盲目だけどよく外に出てるよな。傍から見ると危なっかしい。
そのおかげでだいぶ俺は苦労しているのだが・・・。この際言わないようにしようか。
―――あれ、モールさんってどうやって天気について知ったんだ?俺の事だって見えないのに何で分かったんだ。それだけはちょっと気になる。
「ハンディ君、もしよろしければ一緒に散歩に行きませんか?」
「あ、え、散歩?いいよ。どこに行く?」
あ、天気の事聞くタイミングのがした。
「そうですね・・・昨日ポップさんから聞いたのですが、森の奥にりんごの木があるそうです。りんごが欲しい訳ではありませんがそこまで行ってみませんか?」
「そうだな・・・そうしようか」
しばらく横に並んで歩く。無言で。
ちょっとまて、大の大人二人が横に並んで無言で歩くとかなんか怖いぞ。
そう一人心の中で思っていると、ようやく森が見えてきた。
「モールさん、森が見えてきたようだけど」
「あぁ、そのようですね。あまりここまで来ることが無いから意外と遠く感じますね」
まただ、なんでわかるんだ。
よし、今度こそ聞いてみよう。
「あの、モールさ・・・」
バキッ!!木が折れるような音がした・・・木が折れる!?
何事かと思ってふと上を見るとそこにはスプレンディドが空を飛んでいた。
「はぁ、また双子を見失ってしまったな・・・。よし、この際だから熱線でも浴びせよう。きっと暑くて出てくるだろう」
ちょっとまて!正義のヒーロー!!お前なんてことしようとしてんだ!!
暑くて出てくるどころか焼け死ぬ!!
おまけに俺らまで巻き添えになるじゃないか!!
「も、モールさん!危ないからこっちに行こう!!」
そう言って背中を押す。手が無いからだいぶ苦労した。
走りながらモールさんが話しかけてくる。
「一体どうしたというのですか?あの声はスプレンディド君ですよね?」
「またあの双子が泥棒でもしたんだろうな。それはともかくあのヒーローが双子と一緒に俺たちを焼き殺す前にどこかへ逃げよう」
そう言った途端、後ろから強い衝撃。
風だ。たぶんあのヒーローが起こしたんだろう。
そう思って受け身を取ろうとすると(受け身は大工だから屋根に落ちた時のために少し練習している)前にはモールさん。しかもその前方には崖―――
「う、うわあああああっ!!」
僕ら二人はその崖へ落ちていった―――