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□果実は嫌いです
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「桃娘…聞いた事はあるけれど、実際にいるものなんだね。それじゃあ、君のその香りは香水じゃないんだ」

納得したように呟く。しばらく黙ったままでいたかと思うと、急に立ち上がってカップを片づけ始めた。

「それはすまなかったよ。なるほど…いや、桃色の髪の女の子がこのんで桃娘にされているという話は噂で聞いていた。でも、桃色の髪の女の子なんてそうそう見かけない。それ以前に、桃娘にすること自体禁じているはずだからね」

「禁じてるって言っても、たかが町の規則。そんなの金持ちには通用しないわ」

桃色の髪を見かけないのは、そんな子供が生まれればすぐ様連れ去られるから。桃娘にはそれに合った色がいいっていって好んで連れ去るらしいわ。
監禁され、桃以外のいかなる飲食物も与えられない。
それによって桃娘は体液から桃の香りがするようになる。当然のことながら糖尿病にもなるからその体液は甘い。

そんな桃娘を楽しむのは一部の狂った金持ちだけ。楽しむって言って、何をされるかわかったものじゃないから逃げて正解だったわ。
桃娘は桃しか食べないために体は弱い。だから他の町の住人より寿命が短くて死んでしまう。
おまけに一度死ぬと中々生き返らない、まるで町の外の人間のように。それも桃色の髪をみない理由。

「嫌だったのよ、金持ちの男に売られるのが」

あの真っ黒な笑みが忘れられない。にやにやわらって私に手を掛けてくた。怖くて怖くて、さわらせたくなくて。そばに置いてあったワイングラスで思いっき頭を殴った。
案の定、グラスは割れて、男の顔に破片が刺さったわ。それからは急いで逃げてきた。
銃で撃たれるし、こけてすりむくし、散々だった。

男なんて嫌い。だから一刻も早くここを出たいけれど、流石に助けてもらったものを払いのけて家を出るなんて事は出来ない。どうにかしたい。

「それはそうだろうね…安心してくれ、桃娘には興味が無いし、君を襲うなんて事は決してしない」

そうだ、と、ヒーローは玄関に向かう。

「お腹がすいているだろう?私の家には生憎桃が無いのだけれど、用意してあげよう。少し待っていてくれ」

「…わかった」

これはチャンス。いない間に抜けてしまえばいいじゃない。
彼を見送ってしばらくしたら家を出よう。どのくらいしたら帰ってくるかなんてわからないけれど、家が見えなくなるまではなれてしまえば十分よ。
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