悪食少女の非日常

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入口から顔を出し、辺りが安全であることを確認して一人ずつ外に出た。

本当は期待していた。本当は、珍しいが地震が起きたのだと、期待していた。

だがしかし。

「らんぴーさん…此処の動物たちって気性が荒いはずではなかったです?」

「そのはずなんだが…」

外に出てみると、大量の烏の死体が山積みになっていた。

「…キル、目を閉じてろ」

「どうしたです?」

「いいから閉じてろ」

なんで?とでも言いたげな表情をしつつキルは眼を閉じる。

それを確認して、俺は死体の山を崩した。

「きっと、町の外の森から侵入する際に烏を誤って殺したのでしょう。一人でいたとも考えにくいので、やはりどこかに仲間がいますね」

「あぁ、そうだな」

崩した山の中には、無残に肉を食いちぎられた兵士の残骸があった。これはどこか、キルが双子を喰った跡と似ていた。

もちろん、これは町の者ではないだろうな。

「やっぱり…来ちゃったんですね」

いつの間にかキルが目を開けてその残骸を見ていた。
あれほど閉じろと言っていたのに。

「申し訳ないです。私が来なかったらきっと追ってくる事もなかったです…」

「貴女のせいではありません、そう気を落としてはいけませんよ」

また悲しそうにキルは後ろを向いた。

「…ら、ラッセルさん」

小さな震え声。

嫌な予感がして、キルのいる先を見ると、真っ赤な地面に、ラッセルのものらしき義足や帽子などの残骸があった。

「う、うぅっ…ああああああぁぁっ!!!!私の、私のせいだっ…!!!」

「き、キルっ、落ち着くんだ、落ち着けっ!!」

頭を抱えてしゃがみこんで叫んでいる。
やばい、パニックを起こしてる。このままじゃまずい。

そう思って落ち着かせようとしたが、急にキルは叫ぶのを止めた。怖いくらいの静寂。

「…キル?」

「…ない」

小さな声。呟くようなそれは俺にはよく聞き取れなかった。
しかし。

「許さない許さない許さない許さないユルサナイユルサナイユルサナイ…」

繰り返すその言葉はまるで呪詛のようで。死体をみるその眼はそれに反するように虚無を映していて。

きもちわるい。

それがなんともおぞましい者のように見えてモールと俺は絶句した。
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