悪食少女の非日常
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「一体今度は誰なんだ…モールさんに、ランピーじゃないか」
無事だったのはよかった。
だけれど、少し様子がおかしい。何時になくランピーが焦っている。モールさんも同様だ。
「すみません、急に来て申し訳ないとは思っています。しかし事は一刻を争うのです」
モールさんが口早に言う。
「モールさん、一体どうしたと言うんだい?」
「私たちは兵士の襲撃を受けていたのですが、そのときに子供たち数名が拉致されたようなのです」
「ら、拉致!?っ、誰がさらわれたと言うんだ!」
スプレンディドさんがとてもあせっている。それはそうだろう。ヒーローとしては町の住人、しかも子供が拉致されるなんてもってのほかだから。
「連れ去られたのは、カドルス、トゥーシー、フレイキーの三人だ。俺らは助けようとしたんだが、俺らは何もなく、相手は車を用意していたようでな…周辺に使えそうな車は無いし、仕方がないからまず即戦力になる奴らに報告に来たってわけだ」
ランピーの補足説明が入った。
助けられなかった事が悔しいのか、ランピーは始終落ちつかない様子で、イライラとした表情をこちらに向けていた。
「…なくちゃ」
どうしたものかと考えていた時、そばで小さな声が聞こえた。
「キルちゃん、どうかした?」
「私のせいだもの、私が、私が。私が助けなくちゃ…」
訪ねてみたけれどまともな返事は無い。ひたすらに自分を責めるような言葉を呟いている。先ほどのように笑ってさえもいない。狂気の目。
小さな子供なのにこんなにも恐ろしいと感じる。
「スニフさん。私、お腹すいたの。食べてくるね」
狂気の目で無表情に淡々という彼女が怖い。
「食べてくるって…お前一人で乗り込むつもりだろうが!!止めろ!!!」
シフティがキルちゃんの腕をつかもうとするが、それをすり抜けていく。
僕は先ほどの目をみてからというもの、声を上げる事も、動く事も出来ないでいた。
「っ、キルっ!!!」
走りゆく彼女を止める事が出来る者はいなかった。それほどに彼女は素早かった。
子供なんて言うのは大嘘だ。人と言えるようなレベルの運動能力じゃない。
あっという間に彼女は目の前から見えなくなってしまった。