悪食少女の非日常
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「…誰かいる」
しばらく歩きまわり、すこし凝った造りの建物の前に着いた時感じた気配。
獣のようなそれはおそらく俺が追っていた奴のものだろう。
「いきなり入りこんでもいいが…」
なんとなく、それはしない方がいい気がする。ただの勘ではあるが、この予感は無視しない方がいいだろう。
そっと、扉を開ける。立ち込める血の香りにあおられて飛び出しそうになるのを抑えて中を見回した。
「ん、あれは“こいつ”の夢に出てきた餓鬼じゃねぇか。なんであんなところに」
そういえば、あの餓鬼、他にもどこかで見た記憶がある…。
あぁ、ペチュニアの家、あそこでブッ殺した奴の一人だ。名前は何て言ったか…キル、だったか?
なるほどな。夢に出ていたのはあいつだったのか。
そんでもって、俺が挑もうとしてたのもあいつだった訳。どうしたものかな…一度殺してるし。
ん?あいつ怪我してるな。しかも結構深手。流石にまいてきてるんだろうな。
「貴方達、ですね。お父さんを殺したの。それに、町の子どもたちを連れ去ったのもそうでしょう?」
っと、なんか話し始めたな。誰かいるのか?この角度からは見えねぇけど。
「殺した?えぇ、殺しましたとも。化け物は殺すべきですからね」
愉快だと言うばかりに笑う声。どうも耳についてうざったい。くそ、腹が立つ。
「お父さんを化けも扱いしないでください。何故そんなに私たちの町を嫌うんですか」
「異端だから。それに尽きる」
「わしらにとって異端は脅威。特にお前らのような化け物はいらぬ。お前らなぞ、わしらにとってはいらぬ存在だ」
いらない存在?何言ってんだ。お前らなんかに言われる筋合いはねぇよ。
「もういい。正直、キルは実験に不向きだ。あの子供らを実験には使うとしよう。始末してしまえ」
夢に見たってのは何らかの縁があるのだろうか。
ならば。
「何故何もしていない私たちを殺すの。何故罪もない子供にそんなひどい仕打ちが出来るのっ!許さない。そんな事、私が許さない…許さない許さない許さない!!」
あんなんで戦えるかよ。あんなに取り乱しやがって、冷静な判断が出来るのかっての。
俺がやりたいようにやれたのは死んでも生き返れる保証があったからだ。
だけど今はそんな保証はない。
あいつ馬鹿なのか。
「ちっ、助けてやるか。全部終わった暁には俺がまた殺してやんよ」
俺が殺すための縁だと思って、それを大切にしなきゃなぁ?
サバイバルナイフ片手に勢いよく飛び出した。