悪食少女の非日常

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やっと、“あいつ”から体を取り戻せた。

「何呑気に話してやがる…!舐めやがって!!」

あまりゆっくりしてる暇はなさそうだ。

「キルちゃん…変わってすぐで申し訳ないのだけれど。いったんここから離れよう」

「そういえば、フリッピーさんは多重人格だったですね。…お気持ちは嬉しいですけど、あの人たち倒すまで、私、移動しないです」

「っ、そんな事を言っている場合ではありません!怪我をしているじゃないですか。その状態では勝ち目なんて在りませんよ!」

弾丸をナイフで弾きながら答える。
僕一人ならこんなのどうってことないけれど、けがをしたキルちゃんを気に掛けないといけないから厳しい。

けれど、それでも僕の言う事なんて聞かず相変わらずキルちゃんは以前より鈍い動きでどうにか敵と対峙していた。


あぁ、夢で見た、その通りだったんだね。

たまに見ていた女の子がキルちゃんだって分かったのはつい最近の事だ。
そして、最近の夢は、キルちゃんが兵士から逃げている夢ばかりだった。
お父さんとお母さんは殺された。おばあちゃんももういない、と泣きじゃくっていたのをよく覚えている。


復讐なんて果たしたところで虚しいだけ。だけれどそんな言葉は届かない。

「っ、キルちゃん危ないっ!」

はじき損ねた弾丸がキルちゃんに向かって行くのがまるでスローモーションのように見える。

とっさにキルちゃんに覆いかぶさるようにして庇ったのはよかった。

だけれど一緒になって転がった先には。

「ぐっ、くぅっ…」

「もう、逃げられませんねぇ?全く。手間取らせなかったら良かったものを」

くつくつと笑う顔は見えない。
転がった先は国の議長と思しき人の目の前だった。
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