悪食少女の非日常

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助けに行って人質に取られるとか…。
キル、お前何してんだ。

敵は二人。一人は攻撃特化と言ったところだが、正直この人数ならどうってことないだろうな。

とりあえず、俺の存在を気付かれる前に一人仕留めておくべきか。

正確に狙いを定めて銃器の引き金を引く。
先ほどまで散々打っていただけに、だいぶ慣れてきた。

奥に隠れていた――少なくとも本人はそのつもりらしい――の体がぐらつき、膝をついた。
音はだいぶ響いただろうが、それさえも慣れてしまってあまり気にはならなかった。

「っ、どこにいるっ!?ひ、人質がいるのが…わかってるのかっ…!?」

動揺してるな。よし、これならすぐにキルが殺されることはないだろう。

「フリッピー!!つかまってる3人を保護しろっ!!」

「っ、ランピーさんっ!?…わかりましたっ」

フリッピーも動揺してるな。ったく、敵じゃないんだからもうちょっとちゃんとしてくれや。

目線を離し、もう一度キルを人質に取っている男の方へと向き直る。

「もう、ここには誰もいないのはわかってんだよ。キルを離せ」

「くっ…わ、わかった。だからもう攻撃はやめてくれ」

諦めたようにキルを離し、降参したとでもいうように両手を顔の横で振っている。

「わかったよ。でも動くんじゃないぞ…キル、悪かったな。遅くなった」

「大丈夫、です。私が一人で勝手にやったことですから」

安心しきったような表情。
はぁ、流石にこれは後で説教しないとな。

っと、そうゆっくりしてる場合でもないか。

「…何逃げようとしてんだよ」

這いつくばり、逃げようとした議長らしき男の背に銃口を突きつける。

「…ひっ」

情けないなぁ、全く。

「異端ってそんなに悪いことか?」

ずっと考えていたことだった。
なぜそんなにも力がほしいといい、その割に俺らを恐れるんだって。

「…自分たちの見たことのないもの、聞いたことのないものが急にあらわれたとき、無害であったとしても、恐れる。人間なんて女物だろう?」

「そんなことで俺らを…」

「どうせだから言おうじゃないか。キルの父親が捕まったのは、キル、君のせいだよ」

「っ、な、ん、でっ…」

ちょっとまて、どういうことだって。
キルのせい?なぜ?

「キル、君がもっと幼いころ小動物を殺し喰らっていたという通報が来てね。親もまとめて取り調べとなったのさ」

「じゃ、じゃあ、私が悪食じゃなかったら…」

キルの悪食のせいにするのか。それをきっかけにしたってのか。
しかも、人を殺したわけじゃないのに。

「まぁ、そんなのはただの口実だけれどね。実際には、別に殺して喰らっていたわけじゃない。野良猫に食われかけていた小動物を助けようとしていただけらしい。…まぁ、親が取り調べで町のものだと分かった時点でそれを利用して処刑しようとしたのは確かだがね」

「お前らっ…!」

やっぱりくるってる。とんだ冤罪じゃねぇかよ。

そう思っていたところ、気が付けばキルが男のそばまで近づいてきた。
一気に突き飛ばし、男はバランスを崩してあおむけに倒れこんだ。

「…キル」

「復讐なんて、どうしようもないのくらい…わかってるです。でも…」

「耐えられないってか」

こくりと、キルはうなずいた。

ふとフリッピーのほうへ向くと、フリッピーは黙ってこちらを見ていた。が、目が合うと顔を伏せた。

首を横に振らないということは、決断しがたいといったところか。気持ちがわからなくもないんだろうな。

「ま、まってくれっ、私は事実を述べたまでだっ…!もう、降参もしている。町も襲わない、だ、だから命だけはっ」

あわてて命乞いをしているが、正直情もわかない。

「…キル、お前の好きなようにして構わない。ただし、これきりだ。どんなにこの年の人たちが不満を述べてもこれ以上殺すんじゃないぞ」

「…わかってます。ありがとです、らんぴーさん」

まだ命乞いをする声が一瞬聞こえたかと思うと、その声を発していた喉はキルによって食いちぎられる。
最終的に、心臓を抉り取られ、食われていく様を俺は感情もなく見届けていた。

どうしようもない内戦が終わった瞬間だった。
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