Red×Black

□2 * 仮引越し
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黒子の両親は約1年間の出張だった。



そのため、出張の間赤司の家に住み込むとなると、それなりの準備は必要になる。



「――はい、荷物はこれだけです」



「そうか、じゃあ部屋はそこの角を曲がったところだから。片付けて来い」



言われたとおりに角を曲がると、一部屋だけ扉が開いていた。




ここが黒子の部屋なのだろう。




「わあ..広いですね」




さすが赤司宅、一部屋だけで侮れない広さだった。




黒子は荷物を置きながら、




(よし――絶対恋人らしいことをします)



と、一人意気込んでいた。






そのころ赤司はというと、



(..恋人を家に呼んでおいて何だが、一体どうすればテツヤは喜んでくれるだろうか)



と、腕を組んで考え込んでいた。



「あの、赤司くん」



「あ、ああ。


どうした?」



「いえ..荷物の整理が終わったので」



「そうか、お疲れ」



「有難う御座います、


それと――..」



「?

どうした?」



「泊めてくださって、有難う御座いました」



そう言って黒子は緩く微笑んだ。




赤司は傍目には分からないが、内心黒子の微笑んだ顔に魅了されていた。








「買出しに行くぞ」


赤司がそう言い出したのは、その日の夜の事だった。


「え..今から、なはずがありませんよね。いつ行くんですか?」


「明日だ」


「明日!?

ああ、そういえば明日は土曜日でしたね..」


土曜日の練習はいつも午前中で終わることが多いので、午後はフリーになることが多いのだ。


「ああ。1年間もここに居るならそれなりの日用雑貨とか、必要になるだろう?」


「そうですね..

僕も日曜あたりに買い物に行こうと思ってたので

でも付き合ってもらっちゃって良いんですか?」


「構わない、というか僕がそうしたいだけだしな」


「そう、ですか..有難うございます」


「..お前は礼と謝罪しかしてないな」


「そんなこと無いと思いますよ?」


「いや..

これから長いんだし、そういう遠慮みたいなものは要らないからな」


「え..でも」


「僕の言うことは?」


..絶対ですね、と黒子が諦めたように呟くと、赤司は満足そうに笑みを浮かべた。




夜も更けてきた頃、黒子は布団の中で眠れずに居た。


(..慣れない場所だからか全然眠れませんね)


ふう、とため息を吐きながら水でも飲もうとキッチンに向かう。


「「あ」」


そこには先客が居た。


「黒子..どうした?眠れないのか?」


「はは..はい、どうも寝付けなくて」


苦笑しながらそう言うと、


「じゃあ僕の部屋に来るか?」


と、事も無げにそう言った。

「え..でも」


「人が近くで寝てた方が安心して眠れるだろう?」


「た、確かにそうですけど」


「なら遠慮なく来い」


「..は、はあ」


この人は本当に僕と恋人である自覚があるのだろうか?


普通は恋人が隣で寝る、なんてことになったら動揺するものではないのか..


そんな考えを巡らせていると、赤司が「ほら早く」と急かしてきたので、黒子は枕を持って赤司の部屋に向かった。





「...」


「...」


さっきから沈黙が続いている。


赤司の提案で、2人は同じ布団で身を寄せ合うように寝転がっているため、黒子はかなり気が動転していた。


「..テツヤ、まだ起きてるか?」


「あ..はい、起きてます」


「そうか..」


2度目の沈黙。


黒子は何か話しかけようかと口を開いたとき、


「テツヤと僕、って付き合ってる..んだよな?」


意外だった。


赤司くんもそれを気にしてたなんて..


「..僕も同じ事を考えてました

僕は..君と恋人同士だと思ってます」


「! ふふ..そうだよな、ありがとう」


「いえ..お礼を言われることなんて」


「いや..  テツヤ」


「何でしょう?」


赤司はそこで一呼吸置いて、花のような柔らかい笑みを浮かべたあと、


「大好きだ」


と言った。


黒子は思わず赤司に抱きつきながら、


「僕も――大好きです」


と呟いた。


「ああ..嬉しいよ..

..おやすみ」


「はい、おやすみなさい..」

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