短編
□愛というもの
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僕は愛というものをしらない。
特に知りたいとも思わない。
だが、高校になり僕にも彼女ができた。
僕にも、好きと言う感情が芽生えていた。
それでもまだ、愛というものを知ることはできない
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今日は彼女が僕の家に来ると言っていた。
――七時か...そろそろだな
---ピンポーン
「いらっしゃい」
『おじゃまします』
彼女は少し息を荒くして顔をだした。
すぐに僕の部屋に連れて行った。
彼女は周りを見渡し、僕の方を見た。
『ふふ、征十郎くんの家って以外と殺風景だね』
「そうかい?普通だと思うけど」
『そーだね。男の子は殺風景なのがカッコイイと思うよ。私の理想なだけだけどね』
彼女は再度、クスリと笑った。
「そーいえば、さっき息を切らしていたけど。急いで来たのかい?」
『あ、それはね...』
彼女はそこまで言って、カバンの中を漁った。
そして、キラキラと光るネックレスを取り出した。
「それは....?」
『これね、さっき来るときに小太郎君に会ったんだけど、その時にくれたの』
小太郎に.....?
ネックレスを.....?
なんだか胸がモヤモヤする。
『前に欲しいって言ってたんだけどね。まさか覚えてたなんて』
彼女は嬉しそうに微笑む。
やめろ、やめてくれ。
それ以上、僕以外の男の話をするな。
『今度お礼しなくちゃね』
ああ、なんて.....
胸くそ悪い。
僕は本能のままにはさみを手に取った。
そして...
---ザシュッ
『え....?』
肉が引き裂かれるような嫌な音が部屋に響きわたった。
『せい...じゅ、ろ.......く..』
血塗れとなった彼女は、僕の名前を呼びながら後ろへ倒れた。
僕がやった、のか?
何故だ....?
彼女が僕以外の男の話をしたからか...?
それとも、彼女が他の男からの貰いものに喜んだからか...?
両方とも当てはまるだろう。
でも、一番の理由はきっと...
彼女を僕だけの物にしたかったからだ。
ああ、そうか。
これが....
愛か。
愛というもの
(気づいた時にはもう遅い)
(でも、もう彼女は..
僕のもの)
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