捕縛官カナメ・オースプレット
□喪失、孤独、失敗
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とある時、とある場所に、とある国があった。そして今日、そこで一人の男が殺された。いや、正確には、『処刑された』が正しい。その男のは『殺人鬼』と呼ばれていたのだ。彼の死は多くの人間を安心させた。多くの人間を歓喜させた。そして―、三人の少年少女を喪失に、孤独に、失敗に、追い込んだ。
「や…やめてくれ…どうか…お願いだか
ら…」
血の染み付いた切り株の上に首を固定され、身動きが取れない囚人が無機質な目をこちらに向けて懇願する。
「……………」
・・・・
カナメは無言で、練習用の重たい木製の鎌を振り上げる。
「お…お願いだ…殺さないでくれ……」
人間そっくりに作られたアンドロイドが訴える。機械だが、首を絶てば血にそっくりな液体も出る。
最後のチャンスだ。絶対にばれてはいけないのだ。
「や……やめてくぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
―処刑人に必要な鉄壁の心を失ったなど―