ぼやキングとリズム君の日常
□ダブルス
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「なんだよアイツ…新入部員のくせに…」
テニス部に入部し、その時の部長と初めて打ち合いをしたとき。
ふと耳に入ってきた言葉は先輩からの妬みだった。
それだけなら気にならない。
別に言わせたい奴には好きなだけ言わせればいい。
自分自身もけして性格が良いとは言えないことは承知しているから、他人の行動もそんなに気にすること等無かった。
ただ、俺は普通のテニス部員ならそれで良かった。
例え、自分が独りでも。
しかし、不動峰のテニス部はめちゃくちゃだった。
足がバカみたいに速い神尾。
体格がよく力だけなら右に出るものはいない石田。
前衛キラーと呼ばれる程のボレーの使い手、内村。
目立たないながらも、ミスがとても少ない桜井。
地味だが、確かな洞察力で最強のペアを作り出す森。
そして、少なくとも先輩よりはテニスがうまいと思える…俺。
新入部員にこれ程の実力者が集まり、立場が危うくなった先輩の行動は常識はずれだった。
毎日、放課後部活に行く度に必ずいくつもの傷が出来る。
それは俺だけではなく、中1の全員だった。
部活が終わってもまともに部室を使わせてもらえず、やっと先輩が帰るのは辺りがすっかり暗くなった時間だった。
顧問すら味方になってくれない。
そんな毎日に嫌気が差し、退部届けを書こうとしたこともある。
そんな時、自分を励ましてくれたのが神尾だった。