ぼやキングとリズム君の日常

□エイプリルフール
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Prrrr Prrrr



「…はい。もしもし。…神尾?」
─「あっ深司!?俺俺!!おはよー!」




朝っぱらからずいぶんと騒々しい電話だ。


部活がないからって、わざわざ朝の5時半にいたずら電話で起こしてもらうことは誰も望まない。




「俺俺詐欺なら切るよ。」
─「おい!!なんでそうなるんだ?朝からテンション低すぎだろ…」
「朝からそんなにテンション高い神尾がおかしいんでしょ。」
─「なあなあそれよりさ、聞いてくれよ!」



わざわざ電話に出たのに、会話をするわけでもなくただ話を聞かされるだけかと感じた。


朝は低血圧なせいで、ぼやきも普段より増える。



「俺が話してるそばからなんで話題変えるんだよ…これじゃ会話じゃなくて、俺ただの聞き役じゃん…会話する気がないなら電話しないでよね…」
─「あー!ごめんって!!」
「…別に…で、用って何?」
─「あのさ、今氷帝の跡部が俺んち来てんだよ!」
「ふーん…そう。」



内心、とても驚いた。
ただ、日付を見てすべてを理解した。



こんな朝早くから、わざわざ寝坊常習犯の神尾が電話をかけてくる理由は1つ。
その日に何かしらあるからだ。



─「えっ!?ちょ、ちょっと焦ったりとかしねーの?」
「…わざわざこんな朝早くに電話かけてきて、そんなノロケ話を聞かせるなんて…神尾の言いたいことはわかったよ。」
─「はっ!?」
「俺と別れたいんでしょ??」
─「お、おい深司?嘘だろ?な?」
「そういうことでしょ。わかった。…じゃあね。」
─「まさか…ほんとじゃねえよな?」
「他に理由なんてあるの?」
─「おい、嘘だろ………リズムに乗るぜ!!!!」



神尾は、いきなり電話口で叫んだ。



「うわ、うるさっ…ったく、今俺と電話してることわかってんの?いきなり叫ばないでよ…こんなことで耳聞こえなくなったりしたらどうするつもりだろ…あ、わかったぞ。あえて俺の耳を潰そうとしてるんだろ…嫌になるよな…」
─「ってことで、深司!!」
「何。」
─「今からそっち行くから!」
「は?まだ6時にもなってないけど…」
─「そっちで決着つけるぜ!」
「決着って…」
─「じゃあ切るな!」


ツーツーツー
と、空しく電子音が響く。


「え、もしかしてさっきの話信じちゃったわけ?はあ…自分から嘘吹っ掛けといて、俺が少し嘘言っただけですぐに騒ぎ出して…ほんとめんどくさいな…あーあ、しょうがないからメールしとこ。電話には出ないだろうし…あ、こんな時間だと皆寝てるからチャイムがなる前に神尾のところいかなきゃいけないんだ…」




ぶつぶつとぼやきながらも、足はすでに玄関へ向かっていてメールはすでに打ち終えていた。


すると、玄関の曇りガラスに怪しい人影が写った。
チャイムを鳴らされるわけにはいかないので、すぐに玄関を開ける。



「…なんで泣いてんの。」



玄関の先には、なぜかいくつもの泣き痕がある神尾がいた。



「え、何でって…だって、だって深司がもう別れるって言ってたし…ここに来るまでの間、今までのこと思い出して…」
「はあ…ねえ、メール見てないわけ?」
「えと…あ、携帯忘れた。」


返す言葉もない。



「ほんとバカ…」
「ごめん…」
「良いよ謝らなくて…その格好じゃ寒いでしょ?俺の上着貸すから、早く帰った方が良いって。」
「なあ深司…俺達、ほんとに別れんのかよ?」
「また話聞かないし…メール見ればすむのに…ほんと、手間がかかるやつ…」
「メール…」



そう言い、神尾が俯きかけたとき…
神尾の唇に、柔らかいものが当たった。



「!?」
「これでも、俺が別れたいと思ってると思うわけ?」







「し…深司ー!!!!」


「バ神尾うるさい。」
「だって…だって俺…!!」
「ほら、そろそろ親も起きてくるから帰って。神尾んちもそろそろじゃない?」
「あ、そうかも……んー、じゃあな深司!!大好きだからな!!」
「そんなに大声で何言ってるんだよ…親とか近所の人に聞かれて恥かくのは俺なのにな…」



照れ隠しにそうぼやいたものの、自分の顔が真っ赤になってゆくのを止めることは出来なかった。



部屋に戻ると、携帯のメール受信を表すランプが光っていた。
メールなんて面倒くさいと思いつつ開いた深司の顔は、本人も気づかないが確かにほころんでいた。



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sub:深司ー!!
本文:メールありがとな!
ほんとに、まじで深司大好きだからな!!
これからも2人でリズムに乗ろうぜ!
神尾

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なんだか、今日は良い日になりそうだと思った。
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