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□*気持ち*
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『やべぇ…な』



井ノ原は深い溜め息をついて呟いた。



火照った体が熱く、頭が重い。
体温計を見てみると39.0だった。



『インフルエンザとか…だりぃな』



今、流行してるインフルエンザ。
井ノ原は予防注射をする予定がなかなかたてられず、惜しくも出来ずにいた。



今さら後悔しても、かかったのは仕方ない。



苦しんでるとき、携帯が鳴った。



(誰だ?......岡田??)



携帯を開くと【岡田】が表示されていた。



『ごほっ...岡田?どうした??』



迷うことなく電話に出る井ノ原。



『イノッチ、っ大丈夫なん??』



携帯から聞こえてくる岡田の声。
少し慌てて、急いでる様子だった。



『元気だぜ!っごほ、ごほ』



激しく咳き込む井ノ原。
岡田は心から心配する。



『咳、とまらんの?今どこ?家だよね?仕事終わったから直ぐに向かうから』



『んなっ!?絶対に来んなよ!インフルエンザが岡田にも移ったらーーー』



井ノ原の声も虚しく、岡田は電話を切った。



ーーーーー30分後。



インターホンも鳴らさずにドアを開け、玄関からバタバタと上がってきたのは



『ーーーっイノッチ!!死んでない!?』



息を切らした岡田だった。




きっと急いで駆け付けてくれたんだろう。
もっと井ノ原の心は温かくなる。



『勝手に殺すなよ!ってか出ていけって!』



ベッドから上半身を起こす井ノ原。
岡田に向かって玄関を指差す。



『俺はインフルエンザにかからんもん。イノッチと違って予防接種したし』



うっ、と顔を濁らせる井ノ原を岡田はニヤニヤした顔付きをした。



『ーーーそれに』



岡田は言葉を続けた。



『イノッチのことが心配やねん』



先程の顔と違って真剣な顔しながら言った。



『でも...仕事も忙しいだろ?迷惑かけてまでそんな来て欲しいとは思わねぇよ』



井ノ原は目を反らして言った。



岡田の小さな溜め息が聞こえ、井ノ原の傍に段々と近付いてくる。



『ーーーっ近くに来んな......っ!!?』



我慢出来ず、すぐ傍に寄ってきた岡田に向かって声を掛けたが言葉を失った。



なんでって?
それはもう、こんなことされちゃねぇ。



『…っん。熱、高いやん』



岡田が自分のおでこと井ノ原のおでこと合わせ、声を発すると息が掛かりそうな程の至近距離にいたから。



『ーーーっば、馬鹿やろ…っ』



『顔赤いやん、高熱やね』



(岡田の無自覚天然悪魔めーーーっ!)



井ノ原は心の中でそう叫んでいた。



そんなことも知らず、机の上に置いていたビニール袋をあさってる岡田。



『これ、冷えピタ。貼ったら冷たくて気持ちええよ〜貼ってあげようか?』



『別に良かったのに…さんきゅ』



岡田は井ノ原のおでこに冷えピタを貼った。



(あ…岡田の匂い)



『…イノッチ?どうしたの?』



岡田はキョトンとし、井ノ原を見つめる。



え?、と我に返った井ノ原は目の前にいる岡田の腰に腕を回して、抱きついていた。



『っーーーぬわぁぁ!!!』



いきなり大声を出して岡田から腕を離す。



『っ大きい声出すなや、ビビるやろ!』



岡田は両手で耳を塞いだ。



(お、俺って...何やってんだよ!!)



以上に井ノ原の胸の鼓動が早かった。



『あ、あのさ!岡田って仕事が忙しいだろ?』



『ん...そうでもあらへんよ』



井ノ原の問いに岡田は首をかしげた。



『どうしたん?』



ひと呼吸おいてから井ノ原は答えた。



『健を...呼んで欲しいんだよね』



岡田はピタッと動きを止めた。
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