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□ある愛の証明
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◆ある愛の証明/緑高

※同棲緑高

オレは緑間の事が大好きで、緑間はオレの事が好きだ。だからオレらは一緒に生活している。一緒にご飯を食べて、一緒に眠って、一緒に起きてまた一日が始まる。そんな平穏な日々に、何か厄介なことを起こすのは大抵緑間の方だ。

彼は、ある日突然「夫になる人」の欄に「緑間真太郎」と綺麗な字で書かれた婚姻届をオレの目の前に持ってきた。

「高尾、好きだ。結婚しよう」

テーブルを挟んで向こう側で、真っ直ぐにオレを見つめながらの、プロポーズ。緑間が堅物な野郎だということは前々から知っていたが、ここまで来たらむしろ純粋なロマンチストなのかもしれないと思った。

「………真ちゃん、ちょいとベタすぎなんじゃねーの?」

あまりにも緑間が真剣だったため、オレは笑い出すタイミングを完全に失ってしまい、中途半端な声で反応してしまった。オレが冗談として受け取ったと思ったのか、緑間は「オレは本気なのだよ」と言うのでますます困った。日本では法的に同性婚認められてないのなんて、真ちゃんなら絶対知ってる。それでこれだもんなぁ…

「結婚………て、する必要あんのか?」
「…お前にとっては必要ないのか」
「あー…、ワリィ、そういうつもりで言ったんじゃねぇよ。…んな泣きそうな顔すんなって」
「泣きそうなんかじゃないのだよ」

明らかに不機嫌になった緑間。こいつ勘違いしてる、オレに振られたと思ってやがる。ほんと、馬鹿だよなーそういうとこ。これだからクソ真面目は。いや、そこも含めて全部大好きだけどな。これ以上拗ねられたらあとあと面倒だという事が分かっているオレは、すかさず彼の腕を掴んだ。

「真ちゃんさぁ……オレがそんな紙一枚に縋らなきゃ、お前と一緒にいられないようなヤワな男に見えるわけ?だいたいさ、オレらそんなぺらっぺらな関係じゃないっしょ?何年間一緒にいると思ってんの。今更オレが、真ちゃんから離れるとでも思ってんのか?オレの愛なめんなよ。好きとか嫌いとか、もうそういう次元の話じゃねぇの。ずっと一緒にいたいんだよ、分かるだろ。真ちゃん、愛してる、愛してるよ」

浮かんだ言葉を静かに伝えると、目の前の男は肩を震わせていた。いつもこんなに近くにいるのに、どうして不安になるのかな。オレはへら、と笑って緑間に近付いた。

「真ちゃんの綺麗な泣き顔見れるのは嬉しいけど、そのことで悩むのはもうやめな?」
「ああ…。だがどうしたらこの不安はなくなるのだろうか」
「今すぐオレの服脱がせて、ぶっといのぶち込んで中に沢山出せばいんじゃね?」
「…………」
「もちろんゴムなしで」
「…高尾!!言動がヒワイすぎるのだよ!雰囲気ぶち壊しか!」
「ははは、それでこそ真ちゃんだぜ!」

緑間はやっといつもの調子を取り戻した。でかい図体の割に、心は繊細でセンチメンタルなのな!知ってたけど!キレる緑間にキスをして押し倒し、オレは勝手に服を脱ぎ始める。

「…本気でやるのか」
「当ったり前だろ〜!オレが動いてやんよ」

軽く照れ隠しをしながら「お前、生だといつも腹を壊すだろう…。ゴムが、そこにあるのだよ…」と、ここから手の届く棚の指差す。オレはそれを手に取り、かったるく答える。

「てかオレ、気持ち良けりゃ腹なんかどうでもいいんだけど?ゴムみてえな薄っぺらごときが、オレたちの邪魔をするな!ってね」

そして、オレはそれを箱ごとゴミ箱にぶん投げてやった。へへ、ざまぁみやがれってんだ。勝ち誇った様子のオレを見て、緑間はやっと笑顔になった。

「…泣いて損した気分だ」
「だろぉ〜?もっとオレを信用してくれていいんだぜ」

テーブルの上に置かれっぱなしのあのぺらぺらは、あとで紙飛行機にでもしてしまおう。あんな薄っぺらの代わりにお前を寄越せ、緑間真太郎!

(あんな薄っぺらの分際で、よくもオレらの愛を証明しようなんて言うよな。くっだらねぇの!)


2013.04.18

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