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□Tシャツ計画
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翌朝、教室に入ると高尾が元気良く声を掛けてきた。
「おはよ真ちゃん!」
「………あぁ」
「アレ、真ちゃん元気ない感じ?」
結局オレはあの後3回も抜いてしまった。高尾がそれを知るはずがないにしろ、なんとなく後ろめたい気持ちがあった。意図せずにそれが態度に出ていたらしく、オレはハッと我に返る。
「別になんでもないのだよ。ほら、お前が間違えて入れていったTシャツだ」
「お、ありがとな!」
Tシャツは綺麗に畳まれた状態だったが、高尾の手に渡った途端、彼はそれを広げてしまった。そして、オレは目を疑った。高尾がTシャツのにおいを嗅いでいたからだった。
「…なんだ?何か変な匂いでもするか?」
聞いてすぐ、オレはこの質問をした事を後悔した。さすがにこの聞き方は墓穴を掘っている。
「いや、緑間家の洗剤の匂いだ〜って思ってさ。他人ん家で洗って貰うとやっぱ匂いって違うじゃん?」
あはっ、良い匂い〜なんて言っているので内心ホッとした。昨夜の出来事が高尾にバレたらプライドがずたずたにされるどころではない。本当に良かっ「ところで真ちゃん、昨日オナニーしてたでしょ?」
瞬間、オレは固まってしまった。もはや言葉が出なかった。
「………………っ?!?!」
「は、真ちゃん分かりやすっ!さては俺のTシャツオカズにしてたんだろ?」
「そ、……そんなワケがあるかっ!」
「そっか、したんだ。可愛いとこあるじゃん」
「195の男が可愛いなんて言われても全く嬉しくないのだよ!そもそも何故貴様はそういうところで無駄に勘が鋭いのだ!」
「え〜?だって真ちゃん息荒かったし?電話越しでも分かったぜ。あ、もしかしてバレてないつもりだったの?そんなに欲求不満なら授業サボって今からヤる?」
ああ、こいつがあざとい男だというのは百も承知だったはずだ。オレをからかってはケラケラと弾けたように笑う。
「オレはそんな不真面目じゃない!」
「だろうね。けど、こんな話しててさ〜、実際やばいっしょ?結構キてるっしょ?あ、そだ。オレが真ちゃんの舐めてやろっか。今日部活だし、足腰立たなくなっちゃまずいし?」
「………」
高尾は手で輪っかを作って口の前で前後させ、舌舐めずりをして見せる。その仕草はやめろ。少しむらっときてしまっただろう!
「じゃ、そーいうことで。昼休みにトイレの個室行き決定〜!」
「おい…」
呆れたオレが何も言えないのを無視して高尾は嬉しそうにTシャツを抱き締める。そして言った。
「………ぶはははは!あーもう我慢できねぇ!!マジ真ちゃん素直すぎ!まんまと引っ掛かってやんの!」
「??次から次へとなんなのだよ!」
笑い続ける高尾にその理由を聞くと、なんてことはない。こいつは、『最初からこのつもりで、オレの鞄にTシャツを入れた』のだった。
「まさか本当にその通りになると思わなくてさ!あーやっぱ、サイコーだわ真ちゃん」
「………あとで覚えているのだよ高尾!!」
2013.04.24