小説メイン

□Case4後編【祈り】
1ページ/18ページ

『Levi、hallelujah。』
力が覚醒したあの日。
巨人と仲間の返り血で真っ赤に染まった俺を見て、エルヴィンが無意識に口走った言葉。
向けられた慈しむような瞳からは今にも涙が溢れてきそうで、俺は本能的にその言葉の意味を知りたくないと思った。



『リヴァイおいで。』
『…………。』
渋々ベッドに入り気が乗らないと無言で訴えるリヴァイを、エルヴィンの大きな体が背後から包み込むように抱き締めてくる。
『お前はいつも温かくて心地いい。』
『黙って寝ろ。』
『おやすみ。愛しているよ。』
『っ………。』
リヴァイの左手をとり薬指の第一関節にキスをすると、エルヴィンは静かな眠りにつく。
柔らかい唇の感触の余韻を残したまま早々に聞こえ始めた微かな寝息。
口約通り体の関係は一切求めらず、変わらない日々を過ごすなかで唯一求められた行為。
まるで2人だけの神聖な儀式のように清らかで、エルヴィンの腕の中にいると胸が切なく締めつけられ息が詰まりそうな感覚に陥る。
気を紛らわそうと横にあるサイドテーブルに視線を向けると、カーテンの隙間から零れる月の光に照らされた1輪の黄色いバラが目に入る。
エルヴィンの寝室に初めて入った日から、途切れる事なく美しい姿を保ったまま飾られていた。
(…今日も眠れそうにねぇな……。)
リヴァイがエルヴィンより先に眠ることはなく、穏やかで長い夜が始まる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ