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□Case4【偽】
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地獄絵図のような壁外調査を終えた後。
儚い快楽に身を委ね共にベッドで眠る相手がいるやすらぎは得難いものがあり、それだけが属するに値する。
私はモブリットにせがまれ【契約】を交わし、ミケは自らナナバに申し込み【契約】を交わしていた。
エルヴィンは【F+】を公表している。
それぞれが信念に基づき兵団に服し、システムは本来オマケの存在でしかない。
あの日、君が調査兵団に入団するまでは。
「皆に紹介しよう。リヴァイだ。」
「…………!」
君が登壇したあの瞬間、その場にいた全ての人間が釘づけになった。

街中でも少数派、調査兵団入団は発足以来数人目となる地下街出身のリヴァイ。
綺麗な顔立ちの割には捻くれた表情、年齢よりも子どもっぽく感じる口の悪さ、小柄な容姿からは想像もつかない強さは良くも悪くも人の注目を集め、例外なく私もリヴァイに興味を持った。
モブリットの制止も聞かずに昼夜問わず付き纏い、うざい消えろと罵られても楽しくて計り知れない魅力がリヴァイにはあった。
側にいれるだけでいい。
初めて誰かに対してそう思った。

「え……リヴァイと【契約】したの?」
リヴァイが初めての壁外調査を終えた数日後、ミケと一緒に部屋に呼び出されエルヴィンから聞かされた話に耳を疑った。
「本気か?」
「伴侶を探すつもりでずっと【F+】に属していたが、なかなか巡り会えなくてね。自棄の勢いでリヴァイに【契約】の話を持ち出したらOKを貰えたんだ。2人ともあまり興味本位で問い詰めないように。」
あぁ、その目。
エルヴィン、私知ってるよ。
どこからどこまで本当の事を言っているのか今は分からない。
それでもその言葉が意図するものを理解するには十分だった。
「お前の相手にリヴァイは相応しくない。未だにトラブルを起こし、いくら兵団内で人気が高くても地下街出身者に対する悪評は上層部や王政の間で際立っている。」
「階級が全ての人間にリヴァイを理解させるには時間がかかる。トラブルの内容も今はマナーの悪さや潔癖からくるものだろう?いずれ問題にならなくなる。」
「ダメだ。」
「フム。お前と対立するのは珍しい。それは……」
あれから何を言っても聞く耳を持たないエルヴィンに対し、ミケは不快感を表したまま黙り込んでしまった。
誰よりも鼻が効くミケは壁外調査から戻って以来、何かを警戒しているようなピリピリとした空気を纏っている。
私と言えば話半分でぽやっとしていたからミケに物凄い形相で睨まれた。
大丈夫だって。
この前も言ったけど、私とリヴァイはただの同僚だから。
まぁでも、考えた事なかったな。
リヴァイが誰かのものになるなんて。
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