DRRR!!

□つき
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 綺麗だ

深夜。静雄は煙草を吸いながら空を見てそう思う。静雄は力を使った後で普段は怪我をしないのだが今回は手強かった。かすり傷程度ですんだものの自分にこの力が無かったらその程度では済まされなかっただろう。少し冷たい風が傷にあたりピリッとするが直ぐに治るだろうといつも行く医者である友人の所へは行かなかった。

 「やぁシズちゃん」

目線を月から目の前の男へと下ろす。折原臨也だ。何時から居たか分からないが何時から居ようと静雄には関係ないことだった。

 「大人しいシズちゃんだなんて気味が悪いね」

臨也はそう言いつつ静雄に近付く。それと同時に赤い瞳がゆらゆらと動く。
赤い眼にはいい思いがなく思わず目を逸らした。逸らすといっても目線を月へと移動させただけなのだが。

 「シズちゃんでも月を見たりするんだね」

 「……まぁな」

静雄が答えると沈黙の時が流れる。今なら殺すことができるだろうか。臨也と静雄との間の距離は二メートルもない。この距離ならいつもより高確率で殺せるはずだ。そう考えてはみるも何故か今はそういう気持ちになれなかった。なんとなくこの沈黙の空間が居心地良いのだ。それが何故だか分からず、それが臨也が居るからという思考を消すために月のせいにした。

 「シズちゃん、月が綺麗だね」

 ―そう思うなら何故お前は悲しい顔をして俺を見るんだ?

そう思いながらも静雄は、

 「そうだな」

と答えた。

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