オリジナル小説

□夢魔
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(今日も眠れなかった‥)

私は布団を頭から被ったまま、雀の鳴き声を聞いた
窓から光が射し込んでくる

朝にしては静かすぎる
人が全くいないようだ

なぜなら、私以外の人間は眠っているから

私の住んでいる町に奇怪な現象が起きたのは1年ほど前のこと
私以外の町の住人が、眠ったまま一度も目を覚まさなくなったのだ
その代わりのように、私は全く眠れなくなった

トントン
ガチャ
「おはようございます。朝食の準備ができましたよ」

そう言ってお手伝いさんが部屋に入ってきた
そのまま折り畳み式テーブルをとりだして、朝食の準備をする

お手伝いさんは、私が隣町から連れてきた牧師さんだ
この町を戻すのに時間がかかるので、そのついでに、ひとりぼっちの私を心配して、面倒をみてくれることになった

「どうですか?」
「今日も美味しいよ。ありがとう」
「いえいえ〜私のご飯が食べれるのも今日で最後ですからね〜」
「え?」

そんなの聞いてない
お手伝いさんがいなくなったら私はひとりぼっちになってしまう
私は自然と涙を流していた

「泣かないでください」
「なんで‥いなくなっちゃうの…?」

お手伝いさんが涙を拭ってくれる
それでも私の涙はとまらない

「私がいなくなっても、悲しんではいけませんよ。」
「やだ…みんな寝ちゃってる」
「大丈夫です。全て幻。全て夢です。全て目覚めたら元通りですよ」

お手伝いさんは私と目を合わせて微笑むと、私の体を抱き締めた

「今までありがとう。ごめんなさい」

その言葉を最後に、意識が途絶えた




意識が浮上する感覚
話し声が聞こえる

「‥ここは」
「気がついたの!?」
「本当か!?」

ああ、この声はお父さんとお母さんだ

「教会?」

目を開けて周りを見ると、教会の祭壇の上のようだった

「こんにちは。もう大丈夫ですよ」

牧師さんが近づいてきた
この教会の牧師さん

「ありがとうございます。牧師さん」
「どうお礼を言えば…」
「礼には及びませんよ。私は神の言葉に従っただけ」

両親にそう言ってから、牧師様はかかんで私の顔を覗きこんだ

「おはよう。よく眠ってたね」
「あ、えっと…ありがとうございます。牧師様」
「元気そうでなによりだ。キミは夢魔にとり憑かれてたんだよ。」
「夢魔…」
「ほら、あそこに絵があるだろう」

そう言って牧師様が指さしたところに確かに絵画があった
でも、そこに描かれている人物は



「お手伝いさん‥?」

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