ヤンデレな君の愛し方

ヤンデレな君の愛し方《8》
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先週、秋が退院した。

夏はもう中盤

夏休みも後半に入っているが『そのこと』は気にしてないし困ってもいないみたいだ。

困っているのは……目の前で起きていることだ。


「秋くん、やっぱり可愛いわぁ〜食べちゃいたい♪」
「こーら、千歳(チトセ)。秋くんばっかり構ってたら千尋が拗ねるだろ?」
「あ…そうよね尋(ヒロ)さん。千尋、ごめんね〜」


そう言いながらも目の前の女は秋を着せ替え人形のようにして遊んでいる。

可哀想に秋はどっかの民族衣裳やら外国の有名ブランドの服、しかも女物を着せられて男に写真を撮られている。

………はぁ

…まさか帰ってくるとは思わなかった。

「かーさん、とーさん。もう止めてあげろよ…」

そう、目の前の二人は放浪癖がある俺の『両親』


4年ぶりの最悪の再開。


‐‐‐‐‐‐‐

それは今日の早朝

その時俺は、泊まりに来ていた秋と布団の上で静かに寝ていた。

ふと、目が覚めたので俺は朝飯でも作ろうと下に降りた。

フレンチトーストを作ろうとキッチンに入り、冷蔵庫をあけた。

そこには

入れた覚えのない奇妙な形をした魚や腐ったような肉、更には生きたウリボウまで(イノシンの子供。よい子は真似しない)

まるで地獄絵図のような光景が広がっていた。

あまりの光景に唖然としていると、ウリボウがダダダダダッと勢いよく冷蔵庫から逃げた。

『おい、ちょっと!?』

俺は逃げたウリボウを追い掛けたが四本足のウリボウに勝てるはずなかった。

ウリボウは二階へあがると俺の部屋に入り、ドッタンバッタンと暴れ狂った。

当然、部屋で熟睡していた秋は起きる。

『ひゃぁあぁあ!?助けてぇえええ!!いやぁぁあ!?』

秋は突然現れたウリボウに驚き、俺が部屋に着いたときにはウリボウを刺し殺していた。

パジャマ姿で血まみれになった秋は半泣きでウリボウを窓から外に投げ捨てた。

……むごい

朝っぱらから奇怪現象にあい、思考がついていけない。

目眩がする…

とりあえず秋の服を洗おうと半泣きの秋の手をひき、庭に出た。

風呂場はキッチンに近いので何か嫌だった…のだが

……庭にもまた奇怪現象が起きていた。

赤いような青いような愉快なマーブル模様の丸い物体が飛び跳ね

バケツからはゴボゴボと黒い液体が溢れ

地面にはカサカサと緑の巨大団子虫が走っていた。

『ひゃあぁあぁああ!』
『うわぁあぁっ!!!』

俺と秋は同時に悲鳴をあげ、玄関へ走った。

いつからこの家は化け物屋敷になったんだ!?

『ち、ちぃちゃん。ぼ、ぼぼぼ僕、ちーちゃんの事好きだけど、こここーいう冗談は嫌いかなぁ?あはは、はは…ははは』

秋は完全に思考回路が狂ってしまい、俺に向けて真っ赤な刃物を向けていた。

近所に秋に対する変な噂ができるとヤバイと悟った俺はそれを取り上げようとする。

が、握力が俺より強い秋の手からナイフを奪うことは困難だった。

『はーなーしーなーさーいー!』
『あはは…離さないよ〜…あはは、はーっはは!!』

そんな風にドッタンバッタン暴れているとき



悪魔は訪れた。

『あ、千尋〜!ちょうどよかった。荷物を運ぶの手伝っ……て、秋くん!?』

庭の方から声がしたと思うと、目では捉えられないほどの早さで何かが秋に体当たりをしてきた。

突然の攻撃に秋は目を点にしていたが、体当たりをしてきた何かの正体が分かると顔を真っ青にして引きつらせた。

『キャァァァアアーッ!秋くん秋くんっっ!三年間でこぉーんなに可愛くなっちゃってぇええ!!』
『ひゅむひゅむむむ〜はなしてぇえ』

何かの正体……俺の母親。

その名は東雲千歳。

38歳という年齢だが見た目はその辺の女子高生と変わりない。

恐ろしいくらいの童顔であり、酷いくらい放浪癖がある。

そして、秋をオモチャとして遊ぶひどく迷惑な奴である。

『って、かーさん!?なんで帰ってきたんだよ!!』
『尋さんが二週間お休み貰ったから帰ってきたのよ〜。あ〜ん、まさか家に着いたらすぐに秋くんに会えるなんて……しあわせー!!』

おいおい、実の息子ほったらかしかよ。

『千歳〜、とりあえず車に積んだ荷物は全部庭に置いたよ』
『わ、とーさんまで!?……つーか、荷物?』
『あぁ千尋。久しぶりだねぇ。荷物っていうのはお土産だよ。キッチンにも入れといたよ』

そう言って満面の笑みを浮かべるとーさん。

俺は一つ息を吐くと思い切りとーさんの頬を殴った。









そして色々あって今に至る
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