はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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くそっ、敵はアッサムだけだと思っていたのに…油断した。まさかダージリンがいて、悪魔が彼らの手の内にいたなんて。

自慢じゃないけど、これでもボクはなかなか強い方の部類に属していたと思っていた。あの強大な力を誇るアッサムにだって勝ったのに。
それが今はどうだろうか。渾身の力を込めた一撃だってダージリンの結界を破れなかった。戦闘における能力は完全に鈍ってしまったらしい。

チッ
誰もいない屋上で思いっきり舌打ちする。
これからどうやって和さんを取り返そうか。

「ふっ、すっかり腑抜けてしまったのね。情けないわ」
背後から聞いたことのある声がした。おかしい、屋上の鍵は閉まっているはず…
「鍵なんて私の前じゃ無能よ。それくらい考えればわかることよ、いちいち驚かないでちょうだいな。」
そこにいたのは…加奈子さん?
「ちょっとこの子の身体借りたわ。なかなか居心地良い子よ」
「そんなことどうでもいい、セイロン。用件はなんだ」
バレた?と加奈子さん改めセイロンは舌を出す。
「あらぁ、警戒しちゃって。まるで昔みたい」
セイロンは可笑しそうに笑う。
「いい加減にしろよ、加奈子さんから離れろ。」
「嫌よ。少しくらい穏やかにいきましょうよ。今日は素敵な提案をあなたに伝えにきたのよ」
「提案…?」
「そう。あなたにとって二重も三重もお得な話」
「お前の言うこと、そしてお前ら『ティーパーティー』のことは信用できない」
「あらぁ人聞きの悪い。言っとくけど私はそこまであのグループに執着してないのよ。そ れ に…」
そしてセイロンはボクに近づき、耳元でささやく。
「…私についてくれれば、和やビアンカだって助かるわ。アッサムの粛清はもちろん、あなたの大切な人…リゼだっけ?もかえってくるわよ…」
興味あるでしょ。加奈子さんはニタリと笑った。



* * *

「この子がハセガワナゴミ?」
とろーんとした声が降ってきた。
「そうです。」
「この子ほんとに16歳?とても16歳の体つきじゃなくない?ダージリンの方が巨乳だし色気あるねー」
このくるくるパーマ、腹立たしいこと言いやがって…手足が自由ならぶん殴ってやったのに。
ちなみに今私は狭くて埃っぽい部屋の床に寝かされている。麻酔だかなんだか知らないけど、体がしびれているようで、手足が動かない。
「ここどこよ、あんたたち誰なのよ、那津くんはどうしたのよ」
「しゃべらないで下さりません?耳が痛いわ。質問を一挙に並べるなんて品のない人間のやることね。」
ダージリンというらしい少女が蔑んだ目で見下してくる。なんなんだよもう…
「わーおダージリンえげつないねー」
最高の誉め言葉です、と少女ははにかむ。こいつら頭大丈夫か?
こほん、と少女はわざとらしく咳払いをしてこう告げた。

「ハセガワナゴミ、あなたには我々の所有物、『特効薬』になってもらいます」

というと、ダージリンはとある方向を指す。そちらを向くと(なんとか顔だけは動かすことができた、さっきまで動かせなかったけど)…

神社にいるような、巫女服の少女がいた。赤い袴をはいていて、覗いている足はとても細い。背が高くて胸が大きい、着物の隙間から谷間が見えてやがる。ダージリンといいこいつといいどいつもこいつも嫌みだくそやろう。
髪は綺麗な金髪で、長い髪を後ろで緩く結っている。目は緑色で…
そこまで観察して、ようやく違和感に気がついた。彼女…目に輝きがない。こういう目を何て言うんだっけ…忘れた。髪の毛で隠れて見えてなかったけど首には犬がつけているような首輪もついている。まるでからくり人形とか、蝋人形みたいで。
彼女の様相は異常だ。悪寒が走る。
「あーえっと、あれはリゼだったかな、とにかく『特効薬』になってもらいますから。覚悟しておいてくださいね。」
ダージリンはにこっと微笑んだ。

「ダージリン、もう始めるよ?」
はっ、何を
「はい。よろしくお願いしますキーモンさん」
ダージリンが消えた。テレビの電源が落ちるように。残されたのは私とくるくるパーマ(キーモンっていうらしい)と巫女服。
「あのー、何を始めるん「簡単な記憶操作だよー大丈夫頭の中をリセットするだけだからぁー」

待て待てそれって全然大丈夫じゃ―
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