はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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変な夢を見た。
何故か私は今、色とりどりの花が咲き乱れる花畑の中で座っていた。花は風に揺られて美しい花びらを散らしている。花が踊っているみたいだ。そんな花に見とれていると
「綺麗かい?」
聞き覚えのない声がした。声のする方を向くと、そこには男の子が立っていた。彼は長いマントとストールをまとっていたがいずれも黒いものだった。マントにいたっては汚れが白く目立っていた。くせっ毛と思われる黒髪はぴんぴんはねていて、前髪が彼の左目を覆っていた。前髪に隠されていないところから判断して、白い肌に黒い瞳、整った顔立ち、なかなかイケメンと判断できる。
「驚いた?」
おどけた表情で少年が尋ねてくる。
「そりゃあ、まぁ」
適当に答えておく。この黒ずくめの少年からは『関わると面倒くさいよオーラ』をものすごく感じた。
「ちょっ、ボク怪しい人じゃないよ」
少年はあわてて言う。顔文字にするなら(^^; って感じ。ますます怪しい。今から夢から覚めるために努力することを決心した。とりあえず頬をつねってみる…痛くない…やっぱり今夢のなかだ。あっでもよく考えたら日頃ほっぺたつねってもあんまり痛くないなぁ…痛みってどこで感じるのかやっぱり口のなか噛んだりとかすれば夢でも痛みを感じるのか…
「あのーすいません、ボクあなたとお話したいなー…なんて」
黒い少年が申し訳なさそうに話しかけてきた。前髪で半分顔が隠れているのだが、表情がしゅんとしているのが読み取れる。どよーんという効果音が聞こえてきそうだ。
「ごめんね。わかったよ話聞くから。」
あまりにも不憫だったために思わずそう返事をしてしまった。どうした自分……。少年は満面の笑みで
「わーい聞いてくれるんだねぇ「ただし5分だから。それ以上聞くと寝坊する。」
条件をつけてもなお少年は嬉しそうであった。こいつ話聞いてなかったな…。
「どっから話そっかなぁ」
いきなりぐだり始めた少年にややイラッときたのでとりあえず名前は?と聞いてみた。
「名前ですか…つけてください」
スマイルで返された。この野郎ふざけやがって…
「はいはい。ふざけないでちゃんと教えて。」
「さっきまでの名前はもう捨てた。」
少年は無邪気に笑う。開きなおっただと…まともに会話する気あるのかなぁ…
「わかったよそのうち考えとくから。じゃあ私も名前聞いたから教えるね私の名前。私は「長谷川和」
えっ…
「はせがわなごみ。長い谷の川に平和の和で長谷川和。」
なんで知ってるの!
「当たり前じゃんわざわざ君の夢に現れたんだからボク」
うろたえる私に当然だと目をパチパチさせながら語る少年。何かおかしなところでも?と表情が言っているがおかしな話過ぎる。
「ちゃんと下調べしたんだよ。長谷川和16歳。40歳の母親と中1の弟と3人暮し。身長は159センチ、体重は「言うなバカッ!!!」
そこから先はプライバシーに関わる。言わせてなるものか。
「だいたいあなたはなんなのよ!人なの動物なのフェアリーなのそれとも未確認飛行物体?」
それはUFOだね…という少年の突っ込みは無視。
「そもそもなにしに来た!」
少年は頭を掻きながら答えてきた。
「ボクは人の夢を旅することが出来るんだ…だからフェアリーに近いかな。普段はふらふらと旅することが多いけど今回はちゃんと調べて地図見てここまで来たんだ」
人の夢に地図なんて存在するのか…
「でね、お願いなんだけど、ボクを助けて欲しいんだ。」
屈託ない笑顔でお願いされた。
「遠慮します。」丁重にお断りしておいた。すると少年は体を震わせ、目に涙を浮かびはじめて
「なんでぇ…」
泣き出してしまった。鼻水をすすりながら咽び泣く少年に私は前言撤回をするしかなかった。
「わかった、わかったよ。君を助けるんだね、誰からどうやって」
そういってあげると先程まで泣いていた少年、再び笑顔を取り戻した。
「ありがとう。……じゃあボクはこれで。」
うん…って…えっ!じゃあってなに、どゆこと?!
「5分間の約束でしょ。もう5分間終わっちゃったから続きまた明日。あっ目覚めるまえに今日の学校サボるか遅刻するか決めといた方がいいよ。」バイバイと笑顔で手を振って彼は花吹雪舞うなか消えてしまった。あの野郎…今度あったらただじゃおかないからな…いつかの復讐を考えているうちに私の意識が花畑から現実の世界へと引き戻されていった。
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