はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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「んーなんかいまいち理解できないんだけど、悪魔に接触したら人が人で無くなるから注意してってこと?」
「大体そんな感じだね」
夢太郎はうなずく。
「でもさぁ、悪魔ってどう判別するの?」
私の疑問に彼はそうだねぇと言いながら答える。
「ヤツは色んな姿に変化できるから判別は難しいな…でも目印があって」
そこで夢太郎は私の方に右手を差し出してきた。手のひらにはピンポン玉サイズの透明な丸い石。そのなかには人間に似た何かが映っていた。
「これ…」
「ボクのキオクの一部を映像化したんだ。悪魔の右目をみて、バッテンの傷がついてるでしょ。」
石に映っていたのは悪魔だったのか…確かに右目には×印の傷。
「悪魔は封印される前にその傷を受けたらしい。いくら変化してもそこだけは変わらないんだって。」
「じゃあ今日は右目に傷がある人に注意すればいいのか」
「多分眼帯かなにかで隠してるだろうけどね」
中二病かよ…
「で、その痛々しい目印以外に悪魔の情報ないの?名前とか」
なるべくならたくさんの情報があったほうがいい。
「あーそういえば名前教えてなかったね。あいつの名ま…」
最後まで聞けなかった。そのとき頭にガゴンッという強い衝撃が走ったのだ。くそ痛い。…ここは夢じゃなかったのか…



気がつくと教室は愉快な笑い声で溢れていた。学年一つまらないと評判の先生の英語の授業で何が起こったんだ…見逃したとは惜しい事をした。とりあえず起きて様子を…
…ん?景色がおかしい。目にうつるのはたくさんの足、上履き、制服のズボンスカート、誰かが落としたらしいプリント、掃除してなくて汚い床…床っ?!
どういうこと?!私は机の上で寝てたはずなのに…
「なーごーみーいつまで寝てんの起きなよー」
自分で結論付ける前に後ろの席の加奈子が現実を知らせてくれた。
「長谷川さん…あなたは真面目な方だと思っていたんですが…www」
隣の席の眼鏡の塚原くんが鼻で笑ってやがる…ムカつく…
御察しの通り、私は寝ている間に机から落ちたのだ。頭の衝撃の正体はこれだったのか。なんとマヌケな…おかげでクラスの笑い者だし夢であいつの話最後まで聞けなかったし…って!
一連の出来事で夢での警告の中身を一切合切忘れてしまった。なんてバカなんだ…それもこれも早起きしたせいだなきっと。洋介の懸念は見事に当たっていたよ信じていなかったお姉ちゃんがバカだったよごめんね。
辛い現実を受け入れ、とりあえず私は床から起き上がり椅子に座るといつのまにか進んでいた板書を可能な限り書き取り、そのあとの授業は一睡もせずに真面目に受けた。

いつも通りの学校生活で、床で寝てた以外は特に変わったことのない、なんの変哲もない日常だった。
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