はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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窓の光は遮断され、吊るされたランプは切れていて、部屋に光を提供しているのはテーブルに置かれた3つのキャンドルだった。レースのクロスが敷かれたテーブルには小さなキャンドルの他に、角砂糖の入ったガラスのシュガーポット、ミルクの入った銀のポット、輪切りのレモンがのった小皿、クッキーが積まれている大きなお皿、口から湯気を出す花の描かれている大きなティーポットと同じ柄のカップとソーサーが四人分。

コトリ
誰かがカップをソーサーの上に置いた。

「へーえ、悪魔は今人間界にいるのね」
それは女の声。艶のある、大人の女性。
「人間界か。興味ないなぁ」
だるそうな青年の声。
ポトポトポト…誰かがカップに紅茶を注ぐ。

「キーモンさん、そんなこと言わないでください。」
ふわふわとした、少女の愛らしい声。
「そうさ、ただ我々の勢力範囲がもっと広くなるだけだ。寧ろ喜んでおくべきだろう」
自信に満ち溢れた少年の声。
「アッサム不謹慎〜」
青年がケラケラ笑う。
女性のしなやかな細い腕がクッキーへとのびる。
「でもアッサムさんの言うことは間違ってませんよ」
少女はそういい放つと自分のカップの紅茶を一口飲む。
「そうねー。でもリゼもキャンディーもあまり使い物にならなくなったじゃない」
女性はサクッとクッキーをかじり、咀嚼する。
「それは彼女らが『特効薬』として無能なだけだったんだよ〜」
「ふっ。確かにその通りだけどねキーモン、新しい『特効薬』、いるだろう」
少年は場にいる人に投げかけた。

「それって…ハセガワナゴミ???」
「セイロン正解。」
少年は満足げに笑う。
「ですがアッサムさん、ハセガワナゴミにはあいつが…」
「ははは、ダージリンは心配性だなぁとっても可愛いよ」
「でもかつての戦友であられたのでは?」
あとかわいいは余計です、と少女は付け加えておいた。
少年は表情を変えて言う。
「あんなやつに負けるとでも?か弱い女の子守りですっかりなまってしまったヤツなんかに」
「あらぁ、それってよく負ける前の人が吐く台詞じゃなくて?」
女性はあははと甲高い声で少年を笑い飛ばす。
「セイロン黙ってうるさいよ。ティーパーティーが台無し〜」
「あらぁ、そんなのまた作らせればいいじゃない使い古しの『特 効 薬』に」
女性がそう言うと、場に不穏な空気が流れ始める。

「ねぇセイロン、リゼもキャンディーも俺の道具だ。君のじゃない。パーティーの主催者はこの俺なんだ。勘違いはよして欲しいな」
女性も食い下がらない。
「なぁに言ってんのよ。あんたなんか私がいないと他の世界に行けないじゃないの」
「まるで俺が使えないヤツみたいな口振りだね」
「そう言ってるのよ」

ダァァンッ 突如テーブルを叩きつける音がした。

「二人とも喧嘩はよしてください。ここを爆破しますよ?」
少女の殺気を感じた二人は戦意を失い、無礼を詫びる。
「あ〜あ、愛しのダージリンちゃん怒らせちゃった…ごめんなさいね。今度お茶菓子持ってくるわ」
女性はそういって姿を消した。

「申し訳なかった。俺としたことがつい頭にきてしまった」
少年は手を伸ばして少女の頭を撫でる。その腕を引っ込めるついでにクッキーを手に取り、口へ放りこむ。
「まぁセイロンはいっつも人を小バカにしてるしぃ〜そういうヤツだって思えばなんともないや」
「キーモンさんはおっとりさんですね」
少女は先程少年がやったように青年の頭を撫でようとしたが、リーチが足りなくて断念した。
「まーあねー。そうだな、僕もそろそろ席を外すねー。また呼んでねー」
青年が姿を消した。

「さてアッサムさん。どうやってハセガワナゴミを手にいれるんですか?」
少女は少年の方に向き直る。
「実はまだ決めてないんだ。いくつかプランはあるけど」
少年はしれっと言ってのけた。
「大変失礼なことを申し上げますと、それがこの間あいつに負けた理由なのでは」
「痛いところをついてくるな、俺は君のそういうところが大好きだよ。あいつには負けない、というかこないだだって負けたっていうか…。そういえばあいつ…なんか知んないけどハセガワナゴミに『夢太郎』って呼ばれてたなぁ」
「夢太郎ですか。またまた品のない名前ですね」
「あいつにぴったりだ」
少年はカップに残った紅茶を飲み干す。
「じゃあダージリン。お茶会の場所提供ありがとうね。また今度同じように開こうじゃないか。では俺も帰るよ。リゼ達の調整もよろしくね」
「はい。了解致しました。『特効薬』、必ずやまた使えるようにしておきます。ではアッサムさん、ハセガワナゴミ必ず我等の物にしましょう。あと…しみにしてます、ティーパーティー。」
あざとく微笑む少女にまた今度ねと語りかけ、少年は姿を消し、ティーパーティーはお開きとなった。
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