はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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 世界と世界を繋ぐ暗い道を走る。ダージリンを抱き抱え、キャンディーを安置している教会へ。
 キャンディーの調整はリゼより先に始めていたから、薬効は多少でもあるはずだ。キャンディーの力全て使ってでもいい。ダージリンを治す。たとえ、力を搾り取られ尽くしたキャンディーが永遠に使い物にならなくなっても。
 ダージリンは、そして神社に置いてきたキーモンも、ビアンカ症候群と闘っている。自分の感情を、本質を、奪われないように。抗体があれば病気に自体かかりにくいはずだけれど、抗体があるからこそ、二人は闘えている。
 見えてきた光に飛び込んで、世界に降り立つ。黒い森の中にそびえる、白い教会。近くにある泉は濁っているようで澄んでいて、澄んでいるようで濁っている。俺は教会の扉を蹴り開けて中に入った。

 同じように女の子を抱き抱えて世界に降りた夢太郎が、肘鉄を喰らってダウンしたとはもちろん知らずに。



* * *



 日本語が通じないなら仕方ない。夢太郎に肘を喰らわせて床に降りる。いい所に当たったらしく夢太郎は目を回して倒れてしまったけれど、私にとっては弟の方が大事だ。
 床に突っ伏す洋介の上半身を抱き上げ、開かない目を見て体を揺さぶる。


「よっ、洋介……! 目を開けて! 洋介、洋介ぇぇええ……っ」
「な、和さ……その子気絶してるだけ……」
「どうして洋介が死ななきゃいけないの……っ。! こ、これは……洋介の遺書!?」
「和さん……遊んでるでしょ」


 バレた。まあ半分は本気だ。
 黄ばんだ封筒に赤い刻印で封をしてあるその手紙は、ぶつかった表紙に洋介の手から離れてしまったものだ、多分。
 汚い封筒だと思いつつ放っておく。早くも復活した夢太郎に私の鞄を渡された。そういえばサッカー部の顧問への書類を渡していない。洋介をベッドに寝かせ、枕元に手紙を置き、廊下を歩く。夢太郎が後ろをついてくる。何だろうコレ、デジャヴ――


「……え、あれ……」
「どうしたの?」
「私、さっきまで、あんたそっくりの人といて……え」
「あ、やっと気付いた? 君の言うボクのそっくりさんとボク、同じ人だよ」


 意識がある時に不思議体験したから夢の記憶出てきたのかー云々独り喋っている夢太郎。いつもなら独り言って寂しい人が言うんだよね、とからかってもいいのだけれど、今はそんなからかい文句も浮かばない。
 那津くんとリゼを助けないと。
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