はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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目覚めると、何故かベッドの上で寝かされていた。
「いってぇ…なんだってんだよ…」
衝撃を受けた頭を押さえながら起き上がる。ベッドのシーツは真っ白で、枕は固かった。枕元には先程束原のねーさんから受け取った先輩からの手紙。
そうだ、ここは保健室で俺は那津を探しに来て。ってかもう部活始まってんじゃ!
「那津!部活始まるって…」
俺の声は誰もいない保健室にむなしく響くだけであった。
「今何時なんだ…」
保健室が薄暗いということは大分遅い時間なのか…?最近は日が落ちるのが早くて調子狂う。
ベッドから降りて掛け時計の元に歩く。アナログの時計の針は少し傾いた直線。4時55分を指していた。ずいぶん長い間眠っていたらしい。
「もう部活終わっちゃうじゃねぇか。」
今日はテスト前最後の練習で、それを逃したのは痛い。残念。後で先輩たちに謝らないといけない、めんどくせぇ。

そのとき、背後から声がした。

「こんなところで何してるの坊や」

女の人の声だった。あわてて振り返って声の主を確認する。
ふわふわしたパーマの髪。金髪か白髪かこの暗さでは確認出来なかった。目は綺麗な青で睫毛が長く目蓋にはアイシャドウが塗られていた。綺麗な白い肌に赤い口紅がとても鮮やか。年齢は20代前半くらいか。藍色のジャケットに白いワンピース。ヒールを履いているわけでもないのにむっちゃ背が高くて腹が立つ。外人…?
「いつまで突っ立ってるのよ。なんか言ったらどうなの?」
じっくり観察してたら怒られた。
「あの、どなたかに御用ですか?」
俺の言葉に女性は一瞬顔をしかめてから、次にケラケラと笑い始めた。
「面白いじゃないの坊や。まるで今の状況がわかってないのね。質問をしたのは私よ。くくく…」
何が面白いのかわからないけど笑われた。解せぬ。
「あの、よくわかんないんですけど、僕もう帰ります。失礼します」
知らない人には関わるな。小学校で教わったことだ。
一礼して、ベッドに置いてある手紙をとりに行く。なるべく女性と目を合わせないように。
黄ばんだ封筒を手に取り一目散に出口に。ノブを回せば外の世界に…

あれ

おかしい、開かない。内側の鍵は開いているのに…なぜだ。
「逃げられると思った?ざーんねん。」
振り返ると、片目を赤くぎらつかせた女の人がこちらに歩いてくる。
カツ……カツ……
ヤバい、逃げろ。俺の脳みそはそう指示しているのにからだが動かない。凍りついているみたいだ。
「そんな顔嫌いじゃないわ。その恐怖にまみれた顔。アッサムや夢太郎にもさせてみたいわ。」
アッサム?夢太郎?誰だよ。
「いいわよ坊や。教えてあげる。」
もう彼女と俺の距離はあと一歩分だった。まずいぞ。
「私はセイロン。あなたに協力してほしくって。」
「協力ですか」
「そう。私の敵と闘うため、あなたに極秘の修行を積んでほしいの。私と共闘。」
「敵って誰?その話は僕にメリットあるんですか?」
「知りたい?」
セイロンさんは俺の顔を覗きこむ。近くで見るとこれが美人なんだと痛切に感じる。しかも香水のいい匂い。
すっ とセイロンさんが俺の額に青いマニキュアを塗った指で触れる。どうでもいいけどこれって逆壁ドン?!
「違うわよ、壁ドンしてないじゃない。目を瞑って、坊や。」
壁ドン否定された。まいいや。
俺は言われたまま目を瞑る。
すると、脳裏に映像が入ってくる。赤茶の髪の少年が女の子抱えて走っていて、黒い少年も女の子抱えて…姉貴?!
映像が途切れたので目を開けると一面セイロンさんでびびった。
「理解したかしら。私に協力するってことはあなたのお姉ちゃんを助けるってこと。」
はい、そういうことなんですね。
「わかりました。ならば協力します。」
「物わかりがよくて助かるわ。」
「それで僕は何をすれば」
セイロンさんは立ち上がって言う。
「簡単よ。毎日ちゃんと寝ればいいの。」
それだけ?
「ええ。修行についてはそのとき話すわ。あとその手紙、無くさないでね。大切な物なの。勝手に開けるのも禁止。あと、この事はお姉さんには内緒よ。」
わかりました、というとよろしくねと言われ、契約の印よと、鎖骨に青い葉っぱのシールを貼られた。さらに頬にキスされた。あぁ俺のファーストキスが…
「またね、坊や。」
鎖骨のシールやほっぺたのことを気にしているうちにいつの間にかセイロンさんは消えてしまっていた。
「とりあえず、ちゃんと寝る、か。」
思わず呟いた。
とりあえず帰るとしよう。先程まで開かなかったドアはあっさり開いた。ドアを閉めると、表には『出張中』の張り紙があった。あれれ?じゃあ那津はどこに行ってたんだろう。
そして俺の荷物は部室にあるんだった。早くとりに行かねば。校則に反して俺は走り出した。
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