はちゃめちゃリレー小説

□白昼夢マティーニ
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和さんから手帳を受け取り、事故現場から離れた人目の無いところで、ボクはとある空間にワープした。

白い花が咲き乱れ、優しい光がさすそこは
『ビアンカガーデン』という、ボクの主人である、ビアンカが住む楽園だ。
ビアンカは長い白髪に白い肌、紅い瞳の少女である。現実の世界で言うアルビノってやつ。優しい性格で振る舞いが上品であるが、少々世間知らずなところもある。紅茶とチーズケーキが大好きで、辛いものとしょっぱいものが苦手。光に弱いので日傘とサングラスは常備。ボクの身の上話を聞くのが好きである。とりあえずビアンカは箱入りお嬢様なのだ。



ビアンカは彼女の父親によって、この白い楽園に閉じ込められている。別に父親が虐待しているのではない。その主な原因は彼女の体質にある。

彼女は接触したものや人の持つ害や敵意を感知して浄化することが出来る。出来るというよりは無意識にしてしまうといった方がいい。
その反面、彼女は浄化の代償として身体を一時的に黒く染めてしまう。それは彼女に負担をかける。黒くなった肌は本来の機能を失うのだ。黒くなった肌は感覚がなくなる。黒くなった内蔵は動くことができない。
さらにいうと、彼女の浄化能力は極めて高い。ほんのわずかな害をも感知してしまう。つまり黒く染まりやすい…

ビアンカを愛するあまりに過保護な父親はビアンカが浄化反応で黒く染まり、身体に負荷をかけることをおそれ彼女を外界から隔絶してしまった。
しかし彼女の父親はただの親馬鹿ではない。このままでは彼女のためにならないと分かっている。ビアンカを閉じ込めていたくないと思っている。だからボクにこう命じたのだ。
「少しずつビアンカを外界のものに慣れさせろ」と。


そんなとき、ボクが見つけたのは和さんである。
もちろん彼女は、朝出会い頭にぶつかった相手と夢の中で実は会っていて、こんなことを考えていたなんて思いつきもしないだろう。

なぜ彼女なのか。
実は和さんとビアンカはどこか波長が似ている。相性がいいのだ。ボクの感覚では。波長が似ている理由はわからない。何か特別な運命でもあるのだろうか…
ボクのセンサーが間違っていなければきっとビアンカも和さんのことを気に入ってくれるだろう。もし上手く和さんとビアンカを接触させることが出来たら、浄化反応による害が減るかもしれない。

最も、彼女に目をつけたのはそれだけじゃないがそれは今はどうでもいい。
彼女はいろんな面でボクにとって逸材なのだ。鉄骨落下事故なんかで死んでいい存在ではない。生きて役に立ってもらわないと。


ボクが『ビアンカガーデン』にやってきたのは和さんのことをビアンカに報告するため。
今頃友人たちとカラオケやショッピングしている和さんがボクの計画を知ったらどんな顔をするのだろう。役に立って嬉しいと喜ぶのか、はたまた利用しやがってと怒るのか…想像するのは楽しい。こんな妄想を口にしたらビアンカにはドン引きされそうだけれど…


とりあえずボクは、ビアンカを探すべく、白い花畑に歩みを進めることにした。花の甘い香りが鼻をくすぐり、心地よかった。


今 和さんは、ビアンカは何をしているのだろうか。
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