dream
□サプライズ
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結人とは、もうすぐ付き合って1年になる。
でもなんだか最近、結人がソワソワしてる…
記念日は東京選抜の選考合宿があるとは聞いていたので、会えないのは寂しいけど仕方がない。
だからせめて、今度の休みに出掛けようと提案したのに断られた。
その今度の休みっていう日を迎えているのだけど…
予定があって断られたならまだよかった。
なんか、しどろもどろで…怪しい。
…好きな子でもできたのかな。
私の事、嫌いになった…?
U−14トリオの中でも、一馬は純情すぎて女の子を避けちゃうし、英士は男女関係なく愛想よくないし…
結人は人気がある…と思う。
そんな事を考えながら1人でいたくなくて、英士の家に押し掛けた。
英士はずっと本を読んでいて、まったく相手にしてもらえる気配がない。
「英士ぃ。結人なんだけどさ、最近なんか私の事とか言ってた?」
「なんで?」
返事はしてくれるけど、視線は本のまま…。
「最近なんか変だもん。嫌われちゃったかなぁって…」
「珍しく弱気だね。結人は嘘つけないから、嫌いになったら嫌いってハッキり言うでしょ」
「うーん…でもあの時の結人は…」
私が唸るのと同時に、英士の携帯が震える。
家にいるのにマナーモード。
静かに過ごしたいっていう無言の圧力にも感じられる。
電話には出たものの、英士は言葉を発する事のないまま通話を切り、メールを打ち始めた。
送り終わったのか、再び本に視線を戻す。
これ以上お邪魔しちゃ悪いと思い、散らかした荷物をまとめる。
「あすか。冷蔵庫にケーキあるって言ってたから食べていいよ。ついでにコーヒー淹れてきて」
喜んで冷蔵庫の中を探すけど、見つからない…
とりあえず、英士のコーヒーを淹れて部屋に戻る。
「英士、ケーキなかったよ」
部屋に戻るなり、ムスッと膨れながらコーヒーを置く。
「お前の喜ぶものなら今来たよ」
へ…?来たって?
「あすか!」
振り返ると、結人がいた。
「わっ!結人!なんでいるの?」
「英士にあすかがココにいるって聞いたから」
さっきの電話とメール?
ケーキとコーヒーは、帰ろうとしてた私を引き止めるため?
英士を見ると、我関せずで優雅にコーヒーを飲んでいる。
「ちょっと早いけど、これ…」
包みを渡される。
「あの時 誘いを断ったのは、内緒でこれ買いに行くためだったの?」
「…おぅ」
照れたように頬を掻く。
サプライズを隠そうとして、うまく断れなかったんだ…
それがわかってホッとした。
「ありがとうっ!」
思わず抱きつく。
パタン――と音を立てて本を閉じてから、英士が口を開いた。
「ハイ、そこまで。続きは場所を変えてね」
「「…ごめんなさい」」
2人で頭を下げる。
「結人。お前のサプライズを否定する訳じゃないけど、不安にさせちゃアメでしょ。相談を装った惚気を聞かされるコッチの身にもなりなよ」
装ったって…ひどい…
でも、英士には感謝しなくちゃね。
英士の家を出て、2人で手を繋いだ。
「結人。サプライズ嬉しかったけど、私は結人と一緒に過ごす時間も欲しいな。だから、これからはずっと一緒にいようね!」
「おぅ!」
「合宿終わったらまたお出かけしようね!まずは選考、しっかり残ってね」
「任せろ!」
結人から返ってくるのは短い返事ばかりだったけど。
その笑顔が見れればなんでもいいや。
――ずっと一緒だよ、結人。