dream

□バレンタイン
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「藤村ー!」

「明日はなんの日でしょうっ?」

明日は2月14日。
そう、バレンタインデー。

そんな事はもちろん知っている。
でも私は無言で考えるフリをして、視線を斜め上に泳がせる。

「ひっでぇー!これだけ毎日言ってんのに!バレンタインだよ、バレンタインっ!」

「私には関係ないイベントだし…」

「だーかーらー、俺にちょうだいって言ってるじゃんー」
そう言いながら、ぷくーっと頬を膨らませる。

藤代くん…
君は女子にとても人気があるんだよ。
私なんかからもらってなんの得があるっていうの?
友達と数を競ってる?
それともこういった事に興味のない私からチョコをもらえるかどうかを競うゲームでもしているの?

そういうの、大っ嫌い…

私がいじめられてた時、誰も助けてくれなかった。
友達だと思ってた子すら、見ないフリをした。
それを、通りすがっただけなのに庇ってくれた藤代くん。

少し惹かれてたのに…
そんな事する人だと思わなかった…

「いい加減にして…バレンタインって好きな人にあげるってイベントじゃないの?私が強制される意味がわからない。他の子にもらえばいいじゃない…っ」

藤代くんはポカーンとしていた。


―――――翌日。

「藤村!はいっ!」
藤代くんの手には赤い包み紙に茶色いリボンが掛けられた大きな箱。

「女の子からもらったものを人にあげるとか…ひどいね」

「違うって!」

「俺…バレンタインって、男子が女子からもらうモンだと思ってた。それが好きな子からだったらめっちゃ嬉しいじゃん?だからあんな頼んじゃったけど…
好きな人にあげるってイベントなら、俺から藤村にあげてもなんの問題もないだろ?」
ニッと笑って、私にチョコを押し付ける。

「ホワイトデー、期待してるからなー!」

私が藤代くんの言葉を理解して赤くなる前に、彼は走り去っていた。

なんで私なんかに…?
強豪と呼ばれるこの武蔵野森サッカー部で、花形と言われるFWとして活躍している藤代くん。
女の子から黄色い歓声を浴びる事だって珍しくない。

なんで私…?

いくら考えても答えが浮かばない。

「待って…!」

追いかけても追いつけるはずもなくて。

ホワイトデーまでに答えが見つかるな…


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